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今日できなくてもいい。うつ病と20年つきあった私のマイルール

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「今日できなくてもいい」——甘えじゃなくて、生きのびる戦略。

うつ病と診断されたのは、20年前。
あの頃は、自分が将来どんな風に生きているかなんて、想像すらできませんでした。

今でも、うつの波はやってきます。何もできない日、涙が止まらない日、ただ寝ているだけの1日。そんな日もまだあります。

でも私は、自分なりの“生きのびるルール”を持てるようになってきました。それは、いわゆる社会的な「ちゃんと」からはずれてるかもしれないけれど、生きるために必要なマイルールです。

この記事では、私が20年間うつ病と向き合ってきた中で見つけた、“無理せず生きていく方法”を紹介します。

一番つらかったのは、玄関のドア。

うつがひどくなってきた時期、一番しんどかったのは「出勤すること」でした。
朝、目を覚ますところからすでにツラい。起きる、服を着る、カバンを持つ、玄関を開ける——そのすべてが重すぎて、体が動かない。毎朝、玄関の前でぼんやり座り込み、結局そのまま欠勤の連絡を入れる。そんなことが続きました。

「外に出る」というだけで、心が崩れてしまう。
そんな自分を責める日々の中で、私は“職場が家の中にあれば、なんとかなるかもしれない”と思い至りました。

判断基準はひとつ。「今日、絶対やらなきゃいけない?」

在宅で働くようになってから、私の一日は“判断”から始まります。

「今日は、どうしてもやらなければいけないことがあるか?」
この問いに「ある」と答えた日だけ、私はデスクに向かいます。集中力なんて最初から期待しません。ただ、とにかくPCを開く。最低限の作業を終えたら、昼でも午後でも横になります。
「やったら寝ていい」と決めているから、なんとか取りかかれる。

逆に「今日じゃなくてもいい」仕事なら、すっぱりあきらめて体調優先。寝る、食べる、また寝る。それだけ。

働くというよりも、「生きのびる」ための仕事。それが、今の私の働き方です。

落ちたときは「あきらめ力」が命を救う。

うつの波が来たとき、私は無理をしないと決めています。
頭の中が重く、体が動かず、「ああ、今日はもうムリだ」と感じたとき——まずは、「絶対にやらなければいけないこと」があるかどうかを確認します。

もしどうしても外せない仕事があれば、それだけは全力で対応します。でも、それ以外は全部あきらめる。
関係者には先に「すみません、今日は体調が悪くて対応が遅れます」と伝えておきます。ここで相手から責められるような関係性であれば、その仕事ごと手放す覚悟もしています。
続けるには、まず「生きること」のほうが大事です。

その後は、潔く寝ます。
お腹が空いたらピザを頼み、コーラを飲み、ひとり映画館のように布団でくつろぎます。
気力が少しでも戻ったら、読み終わった漫画をもう一度読みます。
「初見」ではなく、「展開を知ってる安心感」が大切なんです。

読む漫画も、そのときの“うつレベル”に合わせて調整します。
重いテーマは避けて、比較的感情の波が少ない作品——たとえば『七つの大罪』『ブラッククローバー』『ボルト』『錻力のアーチスト』あたり。こういった“軽めだけど燃える系”が、ちょうどいい。

波が引くまでにかかる時間はまちまちですが、最近は2日以内で回復できることが増えてきました。
あきらめるのではなく、「一時停止」しているだけ。
そう思えるようになったのが、大きな進歩だと思っています。

曇り空、寒さ、運動不足——この組み合わせは危険信号。

ここ数年で、自分の調子が悪くなる“予兆”がだんだん見えてきました。

  • 朝からどんよりした曇天
  • 急激な気温の低下(寒の戻りなど)
  • 数日間、運動していない

この3つの条件がそろった日は、ほぼ確実にメンタルに影響が出ます。
逆に言えば、自分の波を予測できるようになるだけで、少しだけ生活がラクになりました。

天気や温度はどうしようもないけれど、「運動不足だけは自分で防げるかも」と思い始めたのも、この気づきがあってからです。

シンクが1週間埋まってても気にしない。

「家事は毎日やるべき」「身だしなみは整えて当然」——そんな“べき”に、私はもう縛られないようにしています。

正直に言うと、シンクに食器が1週間たまっていたこともあるし、洗濯物が山のように積まれていたこともあります。
でも、それで誰かに迷惑がかかるわけじゃない。元気な日にまとめてやれば、それで済む。

誰にも会わない日は、顔も洗わないし、ヒゲも剃らない。髪はそもそもない。
それでも生きてるし、それでも私です。

「自分を責めない」という家事ルールがあるだけで、心はだいぶ軽くなりました。

料理できない日は、ウーバー頼んででも食べる。

「今日はもうキッチンに立てない」って日、ありますよね。
うつの波が来ているときは、ほんの数分の動作すら重くてしんどい。
包丁を持つ気力もない、鍋を洗うなんて論外——そんな日は、無理せずウーバーイーツを使います。

確かにコストは高い。だけど、「食べないリスク」と「出費」を天秤にかけたら、食べるほうが正解だと私は思ってる。

タンパク質が取れそうなメニューとか、温かいスープとか、コンビニで買うよりはマシかな、っていう程度の基準でOK。
栄養バランスなんて、元気なときに考えればいい。今日は、生きのびることが第一。

動けないときの「1時間だけ起きてる方法」

仕事の締め切りが迫ってる。でも体が動かない。
そんなとき、私を助けてくれるのが、冷蔵庫にストックしているレッドブルとモンスター

「とりあえずこれ飲んで、1時間だけがんばろう」と思えるのが大きい。
飲んだからって完璧に動けるわけじゃない。でも、ほんの少し脳がシャキッとする感覚がある。

この“非常電源スイッチ”を入れるような感覚で、作業に取りかかれた日が何度もあります。
無理はしない。ちょっとだけ頑張るためのエネルギー補給っていう位置づけ。

クロールで1km以上。週3泳ぐと、メンタルが変わった。

「運動がメンタルに効く」とはよく聞くけれど、なかなか続けられないのが現実。
私もジョギングや筋トレに挑戦しては挫折してきたけど、スイミングだけは続いています。

理由はシンプルで、泳ぐと気持ちいいから。
水の中って、他の音が消えて、自分の呼吸とリズムだけに集中できるんです。

今では週に3回、クロールで1km以上泳ぐのがルーティンになっています。
膝への負担が少なくて、ジョギングよりもケガのリスクが少ない。
そして何より、泳いだ日は睡眠の質が全然違う。

うつの波がくる頻度も、スイミングを始めてから明らかに減ってきました。
“運動しなきゃ”じゃなくて、“泳ぎたい”と思えるのが、長く続けられてる理由かもしれません。

「ちゃんとしなきゃ」はもう手放した。

20年間、うつと向き合ってきて、いちばん大きな変化は「ちゃんとしなきゃ」を手放せたことかもしれません。

昔の私は、なんでもきちんとやろうとしてました。
毎日掃除、バランスの取れた食事、決められた時間に働く、清潔な見た目で人と接する。
でも、それを全部こなすにはエネルギーが必要で、そのエネルギーがない自分を「ダメだ」と責めてばかりでした。

でも今は、「今日はこれだけやった。えらい!」と、自分を褒めることができるようになってきました。
できなかったことよりも、「できたこと」に目を向ける
そう思えるようになったこと自体が、ひとつの回復だと思っています。

うつ病とつきあう「私だけのルール」で、生きのびてる。

20年うつと一緒に生きてきた私にとって、「今日できなくてもいい」は、お守りみたいな言葉です。

完璧にできなくてもいい。
いつも前向きじゃなくてもいい。
誰かと比べなくていい。

そのかわりに、自分に合ったペースで、自分だけのルールで、今日もなんとか生きてる。
この記事を読んでくれたあなたが、もし今、つらい気持ちを抱えているなら。

どうか、自分を責めずにいてください。
「今日できなくてもいい」って、自分に言ってあげてください。
それは甘えじゃなくて、明日へつなぐための、生きのびる選択だから。

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